星座で801ログ保管庫出張所

桜に攫われる話 083

「牡牛ー、寝てるー?」
「寝てない。水瓶こそ寝ないの?」
「そろそろ寝ようかねぇ」
そう言うと、欠伸をひとつ。
「今日は寝るの遅いねぇ。昨日は私達放って寝てたのに」
4名、夜中まで遊んだ時。水瓶の証言によれば『ふと見たら牡牛が眠ってた』。
自分は、水瓶と獅子が将棋をしていて、その盤上を見ていた乙女に話しかけながら勝負を見守っていた、と、ここまで記憶している。
『いつの間に眠ったの』水瓶が乙女に聞くと『結構前から。ところで牡牛が凭れかかってきてるから動けない』。布団まで運んでくれたのは、獅子だそうだ。それを追って布団のある部屋に行った乙女は、獅子と帰っては来なかった。向こうも眠かったらしい。
そこからは2名、徹夜で遊んだそうだ。
「今は、ちょっと寝つけないだけだよ」
今日も乙女達と遊んでいた。おかげで疲れてはいる。
『3人なんて言ったら、牡牛、お前ずっとここに居るかもしれない』
(頭が痛いこと言う幼馴染だよな〜)
でも、結局双子は帰った。自分のしたい事は夢物語じゃないという証拠だ。
(射手、怒ってたなぁ)
これから獅子と魚にも怒られるのか。だがそれよりも、乙女と蠍に怒られる方が怖い。
「貴方、適当な所で妥協して、こんな所で寝そべってない方がいいかもよ。時間少ないんだから」
「少しダラダラしてるだけだよ。少しなら良いじゃん。普段は身の置き場がないというか」
「そうだね引き返せないしね。ご愁傷様」
「ちょっとうるさい」
イライラしてきたので水瓶に当たってみる。ゴロンと背中を見せる為に動いたら、抱いていた荷物が小さな音をたてた。
「まぁこの子ったら、そんな失礼な口をきいて…」
「人が寝ようとしたところで話しかける奴に言われたくないね」
「あのねぇ。自分の立場がわかってるのかい。このまま愛想尽かされたら終わりなんだよ。
私だって人ひとり殺せるくらいの力はあるからね?まぁ邪魔はしないけどさ」
「殺されたら困るけど、邪魔しないから、だから水瓶大好きだよ」
ただ、やっぱり腕っ節では負けるのか。魚も強いのだろうか。
(本当にコレ役に立たないなぁ)
包丁を手に取ると、溜息をついた。水面を覗き突き立てる。水飛沫と共に迫力のない音がした。
(魚と言えば…)
布団に横になっていた記憶が、薄っすらとある。隣の布団で乙女が寝ようとしていた気がする。
『あれ…起きたのか?』
頷こうとしたが眠気に負けて、ほとんど動けない。
『牡牛が蠍先輩と会うなら、魚とも会うんだろうなぁ』
眠そうな声。むこうも眠くて気が緩んでいたのか。独り言とも取れる話し方だった。
『お前達、どうなるんだろ。ずっと気になってるけど……………………』