目が覚めると、
「よう、おはよう兄ちゃん」
弟が座卓の前で菓子パンを食べていた。
「おはよう」
起き上がり背伸びしたところで、枕元に置いている時計を見る。ようやくツッコミ所に気づく。
「牡羊。何で居るんだ、どうやって入った」
「えー?実家に合鍵ひとつ置いていったじゃんか。忘れた?」
「覚えてるよ、でも何で居るんだよ」
「引越しの荷物が残ってるから手伝えって言ったの兄ちゃんだろ」
「俺が引越しの荷物が残ってるって言ったら、そっちが手伝うから遊ばせろ!って言ったんだろ」
「似たようなモンだよ」
最後のひときれを食べると、ビニールはゴミ箱行き。
「そもそも今、何時だと思ってるんだ?8時だぞ8時。朝の。休日の」
「良い天気だねぇ」
「俺は昨日、鍵かけで寝た記憶がある!」
「だから、合鍵」
「こんな事させる為にあるんじゃねーんだよ。ったく、何時から居た?」
「7時くらいかなー」
「人の家に来る時間帯だと思うか?」
「俺と兄ちゃんの仲じゃない」
それと合鍵が乱用されているのは別問題だ。
「住居侵入する弟はちょっと…」
「わかった、これからは連絡した後に入る」
「うん、もうそれでいいや」
きっと今後、こういった事が起き続けるだろう。両親は何故止めなかったのか。
と思ったが、昨日から数日出張しているのだった。家の電話は自分のところに転送されてしまうらしい。声も聞けるし一石二鳥だよとか、よくわからん理由をつけられた。
…あの両親、ホームシックにかかったんじゃないだろうな。
今回は嫌々引き受けたが、次言われたら断ろう。
「荷物と言っても、すぐ使わないから出してない物だけだよ。5分もあれば終わる」
「何々?どんな物?」
「夏物と冬物の布団」
「うわっ面白くねー…」
「何を期待してたんだ…」
顔を洗い着替え、朝食を作る。
「ん?食事が1人分しかないけど」
「お前はさっき食べてただろ」
「少しでいいからさー」
「えー。…炊飯器に米がある」
「いただきまーす」