「ここに矢が三本あります」
万華鏡を振ったら出てきた矢を、床に並べる射手。当の万華鏡は真上に向かって投げられる。色和紙の空間が現れ、そこから明かりが差した。
「はい、各自1本持って。これを折ってみなさい」
パキッ、パキッ、パキッ。
「折れますね。しかしこちらにある矢。先ほどと同じく三本。これを集めると…折れるでしょうか?」
ひょい。バキャッ。
「ふっ。俺を手こずらせるなら300本は持ってこいや」
「何で力ありそうな獅子がやるかね!?」
「つーかさぁ、この話ってフィクションじゃね?」
「寓話かと。物理的に試す必要は特にない」
「そ、そうだよ(震え声)、力を合わせてこの場を切り抜けようって言いたいだけだよ」
「…口から先に生まれた人間が頑張ってあげよう。乙女、来なさいな。先輩とは後輩の前でカッコつけたり優しくしたりしたい生き物よ。ちなみに蠍は俺と同い年。つまりそういう事だ」
「わ…わかりました。お供させていただきます」
「おい待て。…。ったく、何でこうなってんだよ…」
獅子…移動手段を使った張本人
射手…前科持ち
「…射手。ここに来る前言ってたな。以前、あの蠍って奴に怒られたんだっけ?だから魚じゃなく俺の家に来たんだよな?まっさか今と同じような事して怒られたんじゃ…」
「…いやぁ、仲の良い恋人って微笑ましいねぇ」
「ふっざけんなぁ!そういう事か!どんな血気盛んな人間がいるのかと思ったら!そういや万華鏡を使うそぶりも見せなかったな!?だよなぁ連れて来た奴が最も言い逃れできねぇからな!」
「ここ来るの怖かったんだって!あーあと思ってたら獅子が扇子出しちゃって言う間もなく…」
「あのさ、さっきから何やってるの?」
少し離れた場所にある卓袱台。そこを囲んでいた魚が怪しいものを見る目で声をかけた。
魚視点では、出てくるなり顔を見合わせた4名はその場に座ると、何やらこそこそ話し合い出す。勝手に明かりをつけ、矢を折り、言い争い…お茶を出しながらも訝しがらずにいらない。
「気まずいのかと」
「だよねぇ。蠍ってばやるな!って凍り付いちゃったし。仲が良さが想像を超えてたね」
「えぇ!?いや、そう?だからってさ、そんなとこいないでこっち来てって!」
赤面した魚を見て、今更するか!?と内心叫ぶ双子と乙女が、蠍には効果抜群らしい。二度に渡って雰囲気を壊された苛立ちなど遠くへ吹き飛び頷いていた。
「ねぇねぇ、俺を連れて行ける選択肢はなかったの?」
「え〜。俺、蠍、魚で三本の矢を実演しようとされたらヤバいじゃん」
「(´・ω・`)」
「(`・ω・´)」
座るなり耳打ちし、ガックリする射手とその肩に手を置く双子。その横で何か言い争いを始める獅子と乙女。
「賑やかな再会と初対面だなぁ」
好き勝手騒ぐ客を見ながら、蠍は小さい声で言った。