星座で801ログ保管庫出張所

桜に攫われる話 036

「この調子だと、問題ないらしいもう1組が気になるんだけどさー」
畳の上でくつろぎながら、双子は天井を仰ぐ。久々の重力だ。
獅子と乙女は片付けのため部屋を出た。戻って来るまで、こうして部屋でゴロゴロしている。
「言うと思ったー…。あっちはマジで心配いらなそうだったけど…まぁそうなるよなぁ」
大の字で寝転んでいた射手が身を起こす。
「せめてどんな生活してるのかくらい、見たいもんだな」
桜とは、方向感覚すら狂いそうな家で生活しているのかと思っていた。あんなものは家とは言わないと反論したかったところだ。そこに、この壁以外は家らしい家。と、思う時点大分感覚が狂い始めている。
ちなみに幸いにも、双子は無限に続く空間を体験していない。
「生活…生活ねぇ。それは俺も気になってるよ」
「なーんだ、興味本位に人の恋愛を聞くのには反対してなかったっけ」
「そこはね〜。でも、もう1組は…いや、これは俺も再度見てから決めよっか」
苦々しい顔をし、目を閉じてしまった。
それを眺めながら双子は考えていた。
問題ないと言ったが、全てにおいて問題ないのだろうか。例えば今。数十時間、射手は国内にすらいなかった。
ほぼ2日食べないなんて行動は本当に知らなかったのだろう。
しかし、お喋りでも口が軽くない奴だ。思い返せば、蠍がいる場所については問題ないのひとことで終わらされたのに対し、獅子と乙女については「バタバタしてる」と、場の情景が浮かぶような言い方をした。
本当に全く問題がないのか、ある方面では問題がないのか。確かめる方法はある。蠍と会って話せばいい。
(でも桜の話をした時、面倒な事になったよなぁ)
1対1で話すのは、出来ればもう少し親しくなってからにしたい。
「まったくもうだよ。どーして双方、面倒な人を連れ込んだのかね」
「うむ。我がクラスメートと後輩ながら奴らは面倒そうだ」
「おかげで俺の恋どころじゃないんですけど」
「ま、頑張れってかー?」
「他人事じゃないからな!?」
誇るように胸を張って言われる。
(普通に聞くだけで要望に応えようとはするし、頭使わなくて良いんだよなこいつ)
かえってやり辛い。
「射手ー、双子ー、戻ったぞ」
「…お騒がせしました」
襖が開く音と共に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。獅子だ。少し後ろには乙女もいる。
堂々とした桜と、生真面目な後輩。攫った者と、攫われた者。
(…この2人も同席してたらどうだろ?)