星座で801ログ保管庫出張所

桜に攫われる話 030

写真や手紙は大切に扱う。失くさないように、また見れるように。
今日は妙な話を聞いたな、と自分に言い聞かせ床に就くも眠れなかった。やっぱり気になる。
蟹は立ち上がると電気をつけ、本棚から目当てのものを引き抜く。
天秤は蠍という名前を出した。3年生だとも言っていた。それと、桜の話もしていた。
アルバムや年賀状を漁ってみるも、どこにもそういう子はいない。名前もない。
学校でだって、あれからこっそり調べてみた。結果は自分の記憶通り。では本当に天秤が間違えただけ…と言い切ってしまいたいところだ。そして多分、それが普通の反応だ。
(そうなんだけど…)
別の話とごちゃ混ぜに待ったと言う天秤。しかし、普段品のある人が慌てた姿なんて簡単に誤魔化せるものでない。あれはおそらく本気で言っていた。おまけに名前と学年と知り合った日と関係。ここまで具体的に喋るという行動には自信を感じた。
自分は覚えていた親戚を急に忘れているのだろうか。
信じがたいが、自分の感じた事をまとめると、そういう事になってしまう。そんなわけがあるか、と苦笑いする一方で背中に嫌な汗が流れてゆく。
「……」
また手紙や写真を確認する。
既に10回は見たが、それでもする。
それ以外に、思いつかない。