「どっか行くなら乙女、メアド交換しようぜ」
あえて花見とは言わない牡羊。肝試しにしては季節外れだ。弁当なら近い内に昼食でも誘えばいい。
「牡牛のはもう知っているのか?」
「前のクラスが同じだったからな。郊外学習の時に交換してんだ」
「なら良いんだ。…?」
2台のスマートフォンが、ほぼ同時に震えた。見れば知らないアドレスが書かれたメールが届いている。
送り主は…
「「牡牛」」
「乙女のとこに送ったのが牡羊の、牡羊のとこに送ったのが乙女のアドレスね」
勝ち誇ったような笑顔は、いたずらを遣り遂げた者のそれである。牡牛は実に満足そうだった。
「そうだ牡羊。さっき牡牛から聞いたんだが」
「俺の武勇伝について?」
「違う。提出物をよく忘れるので前のクラスにいた先生と学級委員は頭をかかえていたと聞いた」
「おい牡牛」
「え、違うっけ」
「違いません」
「担任になった天秤先生は新米なのだし、あまり気苦労をかけるなよ。あと俺にも宜しく頼む」
「…牡牛、いらない情報を…」
カツ丼でも出てきそうな光景は数分間続いてしまう。